2015/03/01

ヨナタンとダビデ

ヨナタンは、イスラエルの初代の王サウルの息子つまり王子です。そのため、誰もがヨナタンを次の王様になる人と考えていました。けれどもヨナタンは、父サウルの家来の一人、それも何度戦いに行ってもその都度目覚ましい戦果をあげて帰還するダビデを尊敬していました。そして「この人こそイスラエルの王に選ばれている人だ」と信じていたのです。また、ダビデも王子ヨナタンにいつも敬意を表しており、二人は敬愛と友情とによって堅く結び合わされておりました。

ある日、イスラエルの人々がダビデをこのように讃えているのをサウル王は聞きました、「サウルは千を倒し、ダビデは万を倒した」と。この歌のため、サウルはダビデに嫉妬し、ダビデを亡き者にしようと企てます。しかしヨナタンは、父サウルがダビデに危害を加えようとしても、自分はダビデに味方することを誓うのです。また、たとえ自分が死んでも、その子孫をダビデが守ってくれるように頼み、ダビデもこれを引き受けました(サム上20.12-15)。その後サウルは、ヨナタンとその母までも、ダビデを擁護する悪人と見なして殺そうとします。何とかヨナタンは難を逃れますが、どれほど深い悲しみに襲われたことでしょう。それでもヨナタンは、誓ったダビデヘの忠誠を守るのです。父サウルはもとより、次の自分の王位をも守ろうとはせず、ただダビデとの友情をこそ、大事にする道を選んだのでした。

このヨナタンがペリシテとの戦いでサウルと共に戦死し、ダビデは真友を失うことになります。けれどもヨナタンと交わした約束を忘れず、ダビデはサウル王家から王位を譲られた際、ヨナタンの遺児メフィボシェトを厚遇しました(サム下9)。メフィボシェトは足が不自由で、当時のイスラエルでは差別されて当然でしたが、ダビデはいつも自分と食事を摂るように王命を下したのです。それは「ヨナタンの子孫を守る」という約束ゆえでした。

ヨナタンとダビデとの友情を聖書は「契約」と呼んでいます。人格的な関係は、感情という不確かなものにではなく、契約すなわち確かな言葉に基づいて規定されるものなのです。この聖書的感覚を、私どもの日常生活でも大事にしたいものですね。