2023/12/03

クリスマスの飾り

クリスマスが近づくと、ドアや壁などに掛けるお馴染みの輪飾り。そう、クリスマスリースです。このリースの発祥はギリシャ時代にまでさかのぼることができるそうで、当時のリースは結婚式や春のお祭りなどのお祝いの席に飾られました。続くローマ時代には新年に親しい者同士で互いの健康を祈って贈り合い、玄関に飾ったようです。そして意外にも、このリースのクリスマスグッズとしての歴史は浅く、クリスマス専用のリースが生まれたのは19世紀初頭と言われています。1130日に最も近い日曜日、つまり降誕前節第四主日になって(アドベントが始まって)から飾り、公現日(翌年16日)を過ぎたら片付けられました。

このリースの材料には一般に常緑樹が使われます。ツタを丸めて土台を作り、ヒイラギやモミなど常緑樹の枝葉で覆い、松ぼっくりなどの木の実で飾り付けるのが一般的です。そしてこのリースを机の上に横向きに置いて(もしくはリボンで天井から水平に吊るし)ロウソクを4本立てるとクランツになります。リース同様、これも降誕前節第四主日に飾られ始めますが、日曜日を迎えるごとにロウソクに火が灯されます。この降誕前節はアドヴェントとも呼ばれます。到来を意味するラテン語、アドヴェントゥス(adventus)に由来する言葉で、救い主イエス=キリストの誕生を待ち望んだ旧約の民の心を再認識する期間です。また、その救いが罪からの救いであることから罪の自覚が求められ、そのために、イエス=キリストが十字架につけられる時に着せられた服の色である紫をアドヴェント・クランツのロウソクの色とするのです。

アドヴェント・クランツは19世紀のドイツで始まったと言われています。ドイツでJ.H.ヴィヒャーンがハンブルクにある子どもたちの施設「ラウエス・ハウス」(粗末な家)で初めて行い、当時はクリスマスまで毎日1本ずつロウソクを灯したそうです。1860年以後、ベルリンのテーゲルの孤児院にも伝わり、次第に広まって行きました。クランツはドイツ語で「冠」の意味で、イエス=キリストが王として来られることを、尊敬と崇拝の意をもって待ち望むことを現わします。

このクランツに立てられる4本のロウソクの内、1本だけバラ色(ピンク)にすることがあります。これは降誕前節第三主日のロウソクで、暦の上では「ガウデーテの日」と呼ばれている日に使われます。「ガウデーテ」は「喜びなさい」という意味のラテン語で、降誕前節第三主日の礼拝を始める時に読まれる聖書日課、フィリピの信徒への手紙第44節「主において常に喜びなさい」の冒頭の言葉です。バラ色のキャンドルは紫で示されていた悔い改めの意味を和らげ、喜びの日が近づいていることを示しているそうです。そして4本目のキャンドルが灯された後、教会によっては1224日のクリスマスイブに、ロウソクをすべて神の栄光を表す白に換え、救い主イエス=キリストの誕生により暗闇の世界に光が灯されたことを示すのです。

このように、クリスマスの習慣一つ一つに意味があるのですが、その通りにしなければならない、ということではありません。信仰者たちが歴史の中で受け継いできたクリスマスの本当の喜びを心に留めて過ごすために、一つ一つの意味を覚えておく工夫に過ぎません。でも、それがアドヴェント、クリスマスを有意義に過ごすコツでもあると思います。

ちなみに常緑樹を(永遠を意味する)輪にせず、花束を縛って吊り下げた飾りはスワッグ(ドイツ語で「壁飾り」)、ロープのように壁に張り巡らせたり、ドアや額の周りに貼ったりする花飾りはガーランド(英語で「花輪、花冠」)と呼ばれます。そのいずれにおいても常緑樹の緑は命を、白は神の栄光の輝きを、ポインセチアなどの赤はキリストが十字架で流された血潮を示す、とされます。会堂内に入られたら、礼拝やキャンドルサービスのメッセージに「命」「栄光」「十字架」などのキーワードを探してみてください。きっと、飾付けを見る以上の喜びが皆さんの心に溢れることでしょう。