2014/05/04

いたずら きかんしゃ ちゅう ちゅう

『赤毛のアン』の訳者村岡花子さんが翻訳した絵本の中で恐らく最も有名なのはバートン作『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』でしょう。筆者も大好きな1冊です。ちゅうちゅうは黒光りした、かわいいきれいな機関車です(ドイツ語で「機関車」は“die”がつく女性名詞)。いつも小さな街の小さな駅から、大きな街の大きな駅へ走って行って、また戻って来るのが仕事です。けれどもある日、ちゅうちゅうは考えました、「わたしは、もう、あの重い客車を引くのはごめんだ。わたしひとりなら、もっともっと早く走れるんだ。そうしたら、きっとみんなが立ち止まって、わたしを眺めて―わたしだけを眺めて、言うでしょう。『なんて気の利いたかわいい機関車だろう!…』って」と。そして脱走。好き勝手に走り回り、町中の人や動物たちにとんでもない迷惑ばかりかけまくったのです。そして挙げ句の果てに袋小路の薮の中で燃料切れ。ついに暗闇と沈黙とに支配されました。

ところが、機関士や助手、車掌がちゅうちゅうを探し回り、その跡を辿ってちゅうちゅうを見つけ出し、連れ帰って行くのです。その結果、ちゅうちゅうは自分の持ち前の力を遺憾無く発揮できる持ち場が、小さな駅から大きな駅までの間であると知り、2度と逃げ出さないと決心するのでした。

わたしたちは「自分のことは自分が一番良く知っている」と思いがちです。しかし、それではきっとちゅうちゅうと同じように袋小路に入ります。もしも今、袋小路に在るなら、強がるのをやめましょう。そして自分を探し求めている呼び声を聞くのです。ちゅうちゅうに機関士たちがいたように、羊には羊飼いがあり、わたしたちには救い主イエス=キリストがおられます。この方が私を呼び、私にピッタリの持ち場に私を連れ帰り、そこで私を用いて下さるのです。そこは主と共に生きる場です。<わたし>はそこで生きるのです。