2019/05/01

しごとをとりかえただんなさん

ノルウェーの昔話『しごとをとりかえただんなさん』をご存じですか?若い夫婦が小さな家につつがなく暮らしていました。だんなさんは畑仕事、おかみさんは家事をこなしていました。ある日、畑から戻っただんなさんがおかみさんに「お前はずいぶん楽をしている。俺はあくせく働いているのに」とこぼします。するとおかみさんは陽気にこう答えました、「それなら明日から仕事を取り替えましょう」と。次の日の朝、おかみさんはレーキを担ぎ、だんなさんはほうきを手に取り、それぞれの仕事に分かれて行きました。

だんなさんは鼻歌まじりで家の掃除を始めます。そして夕飯にパンケーキを焼こうと卵を集めに行きました。けれども、生みたての卵を両手に持って戻って来ると、立てかけていたほうきにつまずき、落とした卵は全て割れ、おまけに鼻も潰します。だんなさんは、それならオートミールを作ろうとミルクと麦をボウルに入れてかき混ぜます。が、すぐに暑くなったので、冷えたリンゴ酒を求めて地下室に降り、一口飲もうとしたところ、上の階から大きな物音。慌てて戻るとボウルが割れ、ネコがミルクを舐めていました。怒っただんなさんはネコを追い払い、最初からもう一度、オートミールを作り直します。が、リンゴ酒入りの樽の栓をし忘れていたことを思い出し、地下室に戻ると案の上、全て流れ落ちていました。もはや絶望寸前のだんなさんが、牛に朝のエサをやるのを思い出したのは既に昼過ぎ。牧場に連れて行っている時間はありません。そこでひらめき、小屋の屋根の上に芽吹いている雑草を牛に食べさせることにします。板切れで橋をかけ、屋根の上にようやく牛を連れて上がっただんなさんは、万一に備え、煙突伝いで牛と自分とをロープでつなげて家事を再開。部屋を掃除し始めますが、床に流れたオートミールでほうきはグチョグチョ。そこへ調理中のオートミール第二弾の鍋が吹きこぼれたので急いでかまどの火を消して点け直そうとしたところ、屋根の上から牛が落ち、ロープで結ばれていただんなさんは哀れにも吊り上げられて、煙突の中にキッチリはまってしまいました!


…福音館版はここまでなのですが、童話館版には続きがあります。帰宅したおかみさんがだんなさんを見て笑い、だんなさんが「もう決して、お前の仕事より俺の仕事のほうがたいへんだなんて言いやしないよ!」と言うのです。そして翌朝、それぞれは元の仕事に戻るのですが、その場面を描いた絵は、だんなさんとおかみさんとが微笑み合っているのです(お互いに敬意を込めて)。しかも、それからは時々相手を手伝うようになった、とも語られておりました。


自分が辛い目に遭っている、損をしていると考えると、大切なひとをさえ妬ましく思うのが人間です(創4.)。でも、その傲慢さに気付いたら、実は赦され、愛されている自分であることを知り、生まれ変わることもできるのです。私はこちらのオチが大好きです。なぜなら、これこそ、神によって救われた人間の新しさ、聖書の福音であるからです。