2015/06/01

太平洋か、大西洋か

「太平洋」と「大西洋」とを漢字で書く時、「太」と「大」とがまぎらわしくて書き間違えたひとはいないでしょうか。どちらも海の名前なのに、なぜ別の漢字が使われているのでしょう。

日本にも面している太平洋は五大陸(ユーラシア・北米・南米・オーストラリア・南極)に囲まれた世界最大の海です。16紀にポルトガルの探検家マゼランが初めて太平洋を横断した際、荒れがちな大西洋と比べて穏やかな航海であったことから、ラテン語で“Mare Pacificum”(平和な海)と呼びました。その後“Pacificum”が穏やかな様子を意味する「太平」と訳され、太平洋と表記されるようになったのです。

一方の大西洋は、ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸、そしてアメリカ大陸の間にあります。この海は古代ローマにおいてOceanus occidentalis” (西の大洋)と呼ばれていました。そのため、これを日本語に訳して「大西洋」となったのですが、アメリカ大陸から見たら「東」にあって混乱するからか(?)英語ではプラトンの著書にちなんで“Atlantic Ocean”と呼ばれています。

ところで185376日、浦賀に東インド艦隊マシュー・ペリー提督率いる黒船が来航した時、太平洋と大西洋、どちらを渡って来たかご存知ですか?正解は大西洋です(&インド洋)。でも多くの人が太平洋と思ったのではないでしょうか。そうとすれば恐らく、黒船が浦賀沖に碇泊して以来歌われた「平の眠りを覚ます上喜撰 たつた四杯で夜も眠れずという狂歌をご存知であったからかも知れません。つまり「ペリーは太平(泰平)洋を渡ってやって来た」と思い込んでいらしたのでは?

ちなみに、ペリー提督はアメリカ聖公会(英国国教会系)という教派の信徒で、黒船の甲板上で日曜日には必ず礼拝をしていたそうです。また、浦賀沖で歌われたプロテスタント最初の讃美歌は『こどもさんびか改訂版』25番と同じ曲であったと伝えられています。それもブラスバンド付き力満点だったでしょうね。