2016/02/01

アナとではない「雪の女王」

ディズニーアニメ『アナと雪の女王』を知らない人はいないと思います。「ありの〜ままの~」という歌でもよく知られていますね。実は、主人公がアナとエルサという女性二人になったために「余りにも改変されたので最早別々の作品」と言われるのですが、ディズニー社が原作としたのはデンマークの童話作家アンデルセンの『雪の女王』なのだそうです。

アンデルセン(ハンス・クレステャン・アナスン)はルター派の敬虔なキリスト者でした。その童話『雪の女王』を発表したのは1844年、アンデルセン39歳の時でした。ざっくりと説明すると、物語は「愛が魔法に勝つ」という主題の展開で、「主の祈り」や讃美歌が大きな鍵となっています。また、天の軍勢が登場したり、「永遠」という言葉が重要な場面で用いられたりする他、エンディングでは「子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない」という聖句(ルカ18.17)の奥義を、主人公である少年カイと少女ゲルダの2人が悟るという筋書です。つまり、『雪の女王』は信仰者が手掛けた物語であるだけでなく、信仰の知識を持って読むとひときわ楽しく、面白い作品なのです。

しかし、日本の子どもたちにも多く読まれているこの童話は、アンデルセンの名を冠して販売されていても、讃美歌や「主の祈り」、聖書や「永遠」という言葉もハッキリ語られていない作品が少なくありません。そして、そのために、童話『雪の女王』に込められたアンデルセンの信仰が、読者にはまったく理解されなくなっているのです。本当は、アンデルセンはそこにこそ焦点を置いて書いたに違いありませんが、それがぼかされていることはとても残念なことです。「こひつじ」の読者諸氏には、ぜひアンデルセンの『雪の女王』を手に取って味読して頂きたい、と願ってやみません。もちろん、「もはや別作品である」とお考えになるなら、ディズニーアニメ『アナと雪の女王』もそれなりに楽しめます。そちらでも「愛が魔法に勝つ」というメッセージだけは大切にしようと考えられていることと思います。
(参考:大塚勇三訳『雪の女王』福音館書店)