2024/12/01

街どろぼう

junaida〟という絵本作家をご存知ですか?本名は「あいだ・じゅん」さんと言って、20241127日発行の110円切手「絵本の世界シリーズ/第8集」(シール式)で作品『の』が採用された方です。私はこのひとの『街どろぼう』という絵本が以前(20217月発行)から大好きでした。

あるところに、街を見下ろす大きな山がありました。その頂上に一人、友だちがおらず長い間寂しく暮らす巨人がいました。ある日巨人は麓の街まで降りて行き、家を一軒こっそりと山頂に持って帰ります。朝になって巨人がその家の家族に言いました、「これからはここで一緒に暮らしましょう。欲しいものがあったら何でもあげますから」と。すると「私たちだけでは寂しいので、親戚の家もここへ持ってきてくれませんか」と家の人たちは答えました。そこで巨人はその夜も街へ行き、家族の親戚が住む家をこっそり持ち帰りました。次の日の朝、家族の親戚たちに巨人は言います、「これからはここで一緒に暮らしましょう。欲しいものがあったら何でもあげますから」と。するとそのうちのお婆さんが一人、「私たちだけではつまらないので、友だちの家もここへ持ってきてくれませんか」と頼みます。そこで巨人はその夜も街へ行き、親戚の友だちが住む家をこっそり持ち帰りました。次の朝、巨人が親戚たちに「これからはここで一緒に暮らしましょう。欲しいものがあったら何でもあげますから」と言うと、親戚の友だちの女の子が一人、「私たちだけでは不便なので、街のお店やさんもここへ持ってきてくれませんか」と頼みます。またもや巨人はその夜も街へ行き、街中のお店やさんを丸ごと全部、持ち帰って来たのです。こうして毎晩あれこれ持ち帰るうちに山頂は大賑わい。街の人たちはそこがすっかり気に入って、誰もが喜んで暮らし始めました。でも、その賑やかさに反して巨人は寂しいままでした。もうひとりきりではなくなったのに、なぜか気持ちはひとりぼっちのままでした。

そしてある日の夜明け前、巨人はひとり山を降り、街の跡に立ちました。街はすっかり空っぽで、小さな家が一軒残っているだけです。もちろん巨人が全部運び上げた結果です。巨人は残る一軒家を手に取り中を覗き込みました。するとそこには街の誰からも呼ばれなかった少年がたった一人で暮らしていました。そしてこの少年と巨人とは仲良く、麓でずっと一緒に暮らしました。

これが『街どろぼう』のあらすじです。この絵本を通して、作者のjunaidaさんが語りかけているメッセージがあるように私には思えます。それは、友だちというものは何人いるかが大切なわけではない、ということです。また、たった一人で良い、むしろその人だけがいてくれれば良い、そのように思える相手こそが友だちである、ということです。そうとすれば、そんな掛け替えのない一人を見つけ出すために、ひとは様々な苦労を重ね、時には寂しい思いもしているのかも知れません。しかしまさにその時に強がることなく、自分の最も近いところにいてくれるひとに「わたしの友だちになってくれてありがとう」、そう言えることが大切なのではないでしょうか。

クリスマスは神さまご自身が人となり「我が友イエス」になってくださった記念日です。一人も友だちがいない、と悲しんでいる方、永遠の友が欲しい方、そういうひとはぜひ礼拝でイエスさまに出合ってください。そういうひとのためにクリスマスはあるからです。イエスさまこそ友なきものの友となり、心を砕いてくださるお方です。「わたしの友になるためにイエスさまは世に来られた」、そう信じてイエスさまを迎えましょう。あなたの友イエスさまのほうが大喜びなさることでしょう。